かんがえるおばあちゃん

 おばあちゃんはその昔旅館を経営していた。今でもそのたたずまいを見せるここは萬屋。少し開けにくくなった戸を開けると、明るい笑顔で僕たちを迎えてくれた。おばあちゃんは赤沢に来る前は教員をやっていたせいか、やわらかい物腰の中にも覇気が感じられる。今の子供たちにも思うことがいっぱいあるようだ。『やっぱり家庭教育が大切。』今の親はしからないことで有名だ。確かにただしかればいいというものではないが、時にはしかることも大切。おばあちゃんは続けてこう言う。『母親は太陽でなければいけないですよ。』そんなおばあちゃんも多くの子と孫に恵まれた。みんな健康にそれぞれの生活を送っている。それもおばあちゃんの教育のたまものだろう。おばあちゃんの子や孫が幸せに感じる・・・。
 旅館を閉めて幾年か経つ。身延山と七面山の間にあり、日蓮宗の信者であふれかえったここ赤沢も昔のにぎわいを失っている。おばあちゃんはこの赤沢の将来も考えている。旅館はもう3軒しか残っていないのだ。
 ・・・・石畳の時、おばあちゃんはすぐには同意できなかった。でも、それは本当にこの赤沢のことを考えてのこと。今ではもっとも良き理解者の一人となっている。
 帰り際におばあちゃんはこういった。『みなさん笑顔が素敵でいいですねー。』僕たちは、はにかみながらこう思った。
 おばあちゃんの方が僕たちの何倍も素敵ですよ。

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おばあちゃん

居住地 本建地区 赤沢