お目覚めは鳥のさえずりとともに

 野鳥公園にお勤めの仁さんの名刺は、綺麗な鳥のカラー写真をプリントしたお洒落なもの。その写真は御自身が撮影したヤマセミです。長年、小学校の先生をなさった後、今はここ野鳥公園で、鳥たちと供に過ごしています。
 昔の民話について尋ねると、「新倉の近くの茂倉という集落には、多くの民話があるよ。例えば『手甲岩』とかね。」と話し始めてくれました。手甲岩とは、夜泣きする赤ん坊をお仕置きのために外に出していたら、魔物にさらわれて、食べられてしまったお話。手の甲だけ、大きな岩の上に残されていたために、その岩が「手甲岩」と呼ばれていたそうです。
 また、この辺りでは「ものを載せる」ことを、方言で「ものをケケル」というそうです。「あなた」のことは「ワリャア」、敬語だと「オメェ」。悪口のように聞こえるかも知れませんが、語源は「御前様」からきている敬語なんだそうです。
 兄弟の中でも、一番病気がちで弱虫だったという仁さん。それでも今は一番の長生きだとか。仁さんの子供の頃は、同級生と遊ぶよりも、近所の年上、年下の子供達みんなで遊ぶことが多かったそうです。遊び内容は鬼ごっこ、竹馬をはじめ、アケビ狩り、キノコ狩り、川での魚捕り、そり遊びなど、自然を相手に遊ぶことも。早川の自然を全身で感じて育ったようです。
 好きな勉強は理科。昔から自然に興味があったようです。好きな食べ物は地元の野菜と果物。特に柿やりんごは大好物。もちろん(?)お酒もたしなまれます。長生きの秘訣でしょう。嫌いなものは唯一セロリ。
 そんな仁さん、32年間の教師生活では今の早川町長も教えたとか。町長の成績は・・・・?秘密にしておきましょう。今は野鳥公園の管理をすると共に、鳥たちの生態を観察したり、写真を撮ることがお仕事です。仁さん愛用のカメラ、三脚を見せてもらうことができました。触るのを躊躇してしまうほどのプロ仕様。技術は独学で学んだそうです。好きこそものの上手なれ、とでもいうのでしょうか、その写真に写っている鳥たちは、今にも飛び立ちそうな躍動感に溢れています。今では飛んでいる鳥を見れば、その飛び方、鳴き声、大きさ、羽のカタチで、その鳥の種類が大体わかるそうです。さすがです。
 最後に新倉集落のいい所を聞いてみました。「美味しい水がトントンといつも流れていること、澄んだ空気を味わえること、それに美しい山々を見ながら食事ができることかな。」と余りある大自然に囲まれた生活に大変満足しているようでした。「あとは仲良くみんなでやっていること。」というように、人の繋がり、暖かさを実感しているようでした。 鳥の鳴き声で朝を迎える仁さん。今日も鳥たちが待っています。

  • お目覚めは鳥のさえずりとともに

仁さん

居住地 三里地区 新倉
取材日 2001/12/03