山の亡霊には要注意!

 鹿次さんは森林組合で働いています。生まれ故郷の群馬では、冬は雪深く仕事ができないので、24歳の時に早川へ来たそうです。そこで奥さんの登美子さんと結婚しました。最初に早川町に来た時は、雪がなくてなんていいところだろう、と思ったそうです。その後、しばらくは早川町にいたのですが、娘さんが高校へ行く時に下宿するのが寂しいということで、家族で甲府へ出ました。子供達もちょうどその時、小一、中一、高一になるということで区切りがよかったそうです。その頃から家族中心で生活が動いているんですね。長男だけは、その時すでに、人手が必要と言うことで愛知県の豊田学園に行っていました。その後、鹿次さんの仕事場は神奈川、愛知と変わりましたが、神奈川の時は甲府から通い、愛知の時は息子さんの所から通ったということで、甲府の家は今でも残っているそうです。お正月にはみんなでその家に集まるそうです。色々な場所に行ったけど、鹿次さん達は、新倉が一番好きだそうです。昔から知ってる人もいるし、のんびりしてるのが好きなんですね。
 仕事はどこへ行っても昔から林業関連でした。冬場は3月頃に杉や檜を植えるための準備として地ごしらえをするそうです。林業のやりかたは昔からあまり変わっておらず、7、8人で山へ登って行くそうです。昔からある道を通ったり、クワで道を作ったりしながら登って行きます。変わったことと言えば、遠い山へたくさんの苗木を運ぶ時にはヘリを使うようになったことくらい。ただ、ヘリを使うと高くつくので、少しの荷物じゃ頼めないそうです。それと、昔に比べて獣害も増えました。若い苗木が食べられてしまうから困っているそうです。
 仕事中恐かったことはありませんか?と尋ねたところ、山の言い伝えに「がき」というのがあるそうです。山で亡くなった方の霊で、一人でいる時にくっ付いてくると、ものすごくお腹が減って動けなくなるそうです。鹿次さんも一度なったことがあり、その時は少し歩くともうフラフラになるので、家までの短い距離を歩くにも2、3時間かかったそうです。でもこれには予防策があって、お弁当箱に米粒を一粒残しておいて、それを食べると治るそうです。山に行くときは気を付けないといけないですね。

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鹿次さん 登美子さん

居住地 三里地区 新倉
取材日 2001/12/06