ふるさとの真相を求めて

 取材に伺った時、「ちょうど(私たちが伺うという内容の)回覧が回ってきたところだよ」と笑顔で迎えて下さった、正雄さんと恭子さん。
 正雄さんは昭和三年生まれの75歳。峡南高校を卒業後、すぐに早川町役場に勤め、その後も町会議員として、ずっと町との関わりを保ち続けてきました。保出身の恭子さんとはお見合いで結婚したそうです。
 正雄さんのお宅は、歴史ある馬場集落でも一番古いと云われるものだそうで、それで正雄さんは自分の家や集落の歴史に興味を持ち、役場に勤めている頃からいろいろと独自に調べを進めてきました。それによると、老平は林業や金山で栄えた集落で、正雄さんの家は代々、それらの役を務めてきたのだそうです。正雄さんは鎌倉時代から続く家系の20代~30代目にあたるそうですが、明治30年頃、集落に火が出てそれまでの家や古書類が燃えてしまい、正確なところを調べるのは、今となっては難しいとおっしゃっていました。正雄さんご自身、失われた記録の部分を詳しく調べようと、いろいろと勉強を重ね、苦労して聞き取りなども行ったそうですが、やはり金山や林業をしていたのも正雄さんの親の世代までで、それまで伝わってきた話も、今は知る人が少ないということでした。
 正雄さんは、これまでのそうした調査の結果を本にまとめたこともあります。歴史の調査に来た学生にもあげたそうです。「本質を知るには、ただ家が古い新しいと言うだけじゃなく、それまでの経過を知ることが大事だ」と語る正雄さん。その顔には、まだまだこれからもふるさと馬場の歴史を解き明かしていきたいという、言い知れぬ気迫が伺えました。

  • ふるさとの真相を求めて

正雄さん 恭子さん

居住地 硯島地区 馬場
取材日 2002/08/03
取材者名 小宮 一穂