おうちの前で

 戦争の最中に、天久保からお嫁に来た良さん。その頃は、自分達が食べるものを作るだけで精一杯。なんと、集落を見下ろす山のてっぺんの方まで畑にして、粟・稗・大豆などを栽培していた。当時のことを、「若い頃だから、平気で行ったり来たりしてた」と思いだす。
 その頃まだ家にはおばあさんがいて、一緒にお蚕さんを飼っていた。また、良さんの子供、つまりひ孫のおこもりもしていてくれた。90歳を越えていたにもかかわらずおこもりをしてくれて、とても助かった。
 また、百姓仕事と同時に土方の仕事をしていた頃もあった。その頃は、朝早く起きて土建の仕事に出かけ、夕方家に帰ってきてから真っ暗くなるまでは畑の仕事をしていた。大変な思いをしてお子さんを育てた。
 今の畑仕事は、自分の食べる分をちょっとだけ作っている。大豆、ウリ、ナス、白菜など。大豆から自家製の味噌を作ったり、白菜は漬け物にしたり。時折子供が遊びに来た時に、野菜や味噌・漬け物をもたせてやる。おいしいと評判で、それが楽しみで作っている。
 現在の生活を「いちばん生き生きしている」と話す。けれど、昔はにぎやかだったのに、今は人が少なくなって、お茶飲みに行くところも少なくなった。それでも、口をききたいから外へ出る。我々は、ちょうどその時に良さんに会い、お話を聞かせていただいたのでした。

  • おうちの前で

良さん

居住地 五箇地区 古屋
取材日 2002/03/02
取材者名 伊藤 栄介