バランス感覚

 今日は陽がとっても高く、とっても暑い。ひと風でも吹いてくれたらな。そんな午後一番の時間にいえに向かい入れてくれた安市さんと和代さん。早川の影の中はすごく涼しく気持ちいい。
 最初は警戒されていたみたいですが、はなしはじめれば笑顔のたえないお二人。旦那さんの安市さんは、話を聞いていても目まぐるしい人生が伝わってくる。最初のお勤めは東電。その後関東電気株式会社へ。オギノ、高畑精工を経て、H3年に区長として保に戻ってきたそうです。最初のお勤めのときに電検2種の免許を取得したそうです。現在は公民館長7年目。町会議員もしていた。
 ----僕達はため息ばかり。----
 奥さんの和代さんは、かつて内職で刺繍のお仕事をしていたそうです。
 つらい話だけど、20年前の大火事のことをはなしてくれました。そのころ安市さんは兵役に、和代さんは同じ保の実家にいたそうです。この火元は旅人が出したもの。それが強風にあおられて保全体に広がってしまった。帰ってきたときの風景には涙が出た。何よりもつらかったのは、蔵がもえてしまったこと。その中には知人から預かった歴史的に貴重なものもあった。これらを現代に伝えられたら本当によかったのにな。うつむきながら安市さんは話してくれた。現場にいた和代さんも、あんなひどいことはない、と下を向いたまま首を横にふっていた。
 今のお二人は少しのんびりできる様です。今の趣味は野菜づくり。二人が食べる分を自分達の畑で、そして子供さん達が持っていく分も自分達の畑で。「それが楽しいんだ」、いつしかため息も忘れてしまう。安市さんはさらに菊の盆栽に夢中なのだそうです。50もあろうか、庭に並べられた鉢を見せてくれました。これが全部咲いたら、赤や黄色や白や紫や。きっときれいなのでしょう。文化祭で販売するそうなので是非お買い求め下さい。和代さんは造花を。さらっと玄関に飾ってありました。木の下駄箱にいいバランスで。バランスといえば、お二人の話すタイミングはとてもいいバランス。和代さんが話し終われば安市さんが、安市さんの間の手を和代さんが。いつまでも聞き入ってしまいました。いいバランス感覚でいつまでもお体を大切に。

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安市さん 和代さん

居住地 都川地区 保
取材日 2001/08/28