嫁を大事にする保の若きIターン者

 拓也さん・高さん夫婦は結婚と同時に、2000年4月に京都から早川にIターンしてきたとっても気さくなご夫婦です。Iターン者は一般に夫が希望して妻が付いてくる場合が多いそうですが、拓也さん夫婦の場合は逆でした。高さんは子育てをする際は子どもが親のしている仕事をイメージできることが大切だと考えていたため、旦那に林業などの一次産業に就いてもらいたいと思っていて、旦那の拓也さんもそれに賛成したのでIターンをしてきました。Iターンしようと考えてから、移住先をいくつも探しはするものの、なかなかいいところが見つからなかったそうです。早川という理想の移住先をみつけた経緯は、まず田舎暮しの雑誌から、山梨の林業関係の就職セミナーを見つけました。そのセミナーで、いくつかある就職場所の中で早川の森林組合は対応が親切だったし住宅も手配してくれることもあり、とりあえずその帰りに早川を初めて訪れてました。道路もしっかり整備されていたので早川というまちに住んで森林組合で働くことを現実的に考えるようになりました。次に早川の町内を巡り、森林組合の面接を受け、その段階で移住をほぼ決定しました。そしてそのあと、組合が紹介してくれた空家を見ました。貸してくれる家があったことも早川に住む重要な決め手になりました。
 仕事は決して楽とはいえませんが都会で働いていたときより充実していると言います。仕事で汗を流し、自分ががんばった分だけ妻の高さんが楽しい時間を過ごすことができると考えています。愛妻家の拓也さんからのメッセージは「嫁を大事にできない奴はIターンなどできない」ということです。
 早川に住んでみてさほど不便は感じないようです。都会にいても買い物でまちへ出るとき渋滞で時間をとられたりすることを考えれば、車の少ない早川では以外に移動時間がかからなかったりします。病院だって30分以内に行けるし、救急車もすぐ来てくれる。食べ物はほとんど町内で手に入るし、京都にいたときよりむしろ便利だといいます。たしかに経済的な事情は以前より悪くなりましたが、何より精神的なくつろぎはここの方がはるかに感じるといいます。観光化したり工場を誘致すればある意味では豊かになるかもしれないが、それ以上に失うものが大きいのです。早川らしさとは何かを早川の人たちはよく分かっているといいます。本当の豊かさとは経済的なことよりもむしろ精神的に豊かであることかもしれません。実際に拓也さんも、都会では仕事でストレスばかり溜め込んでいましたが、早川に来てこころに余裕ができ物事をおおらかに考えられるようになったそうです。
 身重の高さんは今年秋に出産予定。人口が減り続けている早川にとって、一人の命の誕生は、まちの希望でもあります。早く赤ちゃんの元気な姿が見たいですね。しかし、子供の少ない早川で子供を育てるということは、早川で子育てをする親にとっての悩みの種です。拓也さん・高さん夫妻はこう考えます。同級生がいないということが、本当に悪いことかどうかは育ててみないと分からない。もし同級生がいた方がいいと子供が自覚したら、そのとき子供は町外へ出るだろう。早川に住み続けることを強制はしない。でも自分たちは、子供がそのような選択を自分でできるようになるまでは、このまちで育て続けたい。
 拓也さん・高さん夫妻が感じる早川のいいところとは、こじんまりとかつ和気あいあいとしているところ、新しく入ってくる人でも暖かく迎えてくれるところです。集落に100%溶け込んでいるとは今でも思わないけれど、相手がどういう態度をとったとしても自分からそこに溶け込もうと思い続ける姿勢が大事であるといいます。人と接することが大好きな拓也さんは集落の行事にも進んで参加していて、去年の祭りでは獅子舞をかぶって踊ったそうです。
 拓也さん・高さん夫妻の若さと明るさで元気になった集落の中で生まれてくる子が力強く育ってくれるといいですね。

  • 嫁を大事にする保の若きIターン者

拓也さん 高さん

居住地 都川地区 保
取材日 2001/08/29