ふみさんは、伊豆がお好き?

ふみ江さんのお宅に伺うと、ちょうど玄関先でキビ踏みをしているところでした。
 大正7年生まれのふみ江さんは、どこか気品があって、凛とした清清しさを感じさせる人でした。
 早川町内で生まれ育って、19才の時に上京。湯島天神の近くに住んでいたそうです。ふみ江さんのそんな雰囲気は、その頃身に着けられたのでしょうか。
 しかしその東京生活もそれほど長くは続かず、戦争が激しくなってお兄様が軍隊に徴用されると、赤沢のお母さんのもとに戻ることになりました。
 20年程前、40年ぶりに東京を訪れたときは、その変わり様にずいぶん驚かれたそうです。なにせ、ふみ江さんのお若い頃はみんなモンペしか許されなかった時代で、いまでは「ロンゲ、顔グロ、ピアス・・・」ですものね。
 ふみ江さんは赤沢に戻ると、22才の時に今のお宅に嫁がれました。
 その頃はまだ焼き畑が行われてたそうで、焼いた斜面を鋤いたり、猪除けのために一晩中火を焚いたりと、その仕事のきつさが窺えました。山を焼き拓いたばかりの畑を「アラク」といい最初はそばを植えたそうです。そのあと粟や小豆、大豆、ひえなどを育て、古くなった畑は「古な(クナ)」と言うそうです。
 もう焼き畑が行われなくなってずいぶん経ちますが、その頃の事を思い出すときの、遠くを見るようなふみ江さんのまなざしがとても印象的でした。

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ふみ江さん

居住地 硯島地区 稲又・細野
取材日 2001/08/30