我が家は200歳

 孝夫さんと鶴治さんはとても仲のよい夫婦です。孝夫さんは、ここ細稲で7代目の硯職人の家に生まれました。写真の硯は雨端堂というものだそうです。雨畑の硯といえば有名ですが、孝夫さんの先祖はその中でも、元祖の硯職人でした。現在は植木が趣味だそうで、なるほど、お庭は手入れが行き届いていました。
 鶴治さんは原村出身で、結婚と同時に細稲に来ました。趣味は俳句・川柳・短歌で、早川俳句同好会にも所属しています。また、「樹海」、「白露」といった本にも毎月出しています。ご自身では謙遜していますが、その腕前にはかなりのものがあります。
 お子さんは5人、お孫さんは8人もいます。みな町外で生活していますが、盆正月は皆さんが集まり、とても賑やかになるそうです。たまに友人を連れて帰ってくることもあり、さらに賑やかになるそうです。この細稲は昔から世帯数が少なくとてものんびりしたところで、都会から来た人にとっては、まるで別荘のように見えるでしょう。ここのお宅は築200年以上たつそうで、木造平屋の立派な日本家屋です。写真ではうまく伝えられないので残念ですが、真っ黒になった大黒柱、梁の下にむき出しになって昔ながらの電線など、ありとあらゆるディテールが、美しいとしか言いようがありません。これからもずっと残してほしい家です。
 このまちはこれからも存続してほしいと思う気持ちはあるし、だからこそ子供には、できれば戻ってきてほしいとも思っています。そうはいっても、職場ないのなどの現実問題を考えれば、どうにもならないというのが今の心境です。しかし、その笑顔からは、早川での現在の生活を、前向きに楽しんでいる様子が伺えます。自分の畑でつくった野菜を渡したり、もらったりする田舎ならではの関係が楽しくてたまらないといいます。取材した私達は、孝夫さんと鶴治さんから、元気をひとつ頂いたような気がします。

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孝夫さんと鶴治さん

居住地 硯島地区 細野・稲又
取材日 2001/08/29