幻の寿司職人

 おじいちゃんにどんな仕事をしていたのか、と聞いたら意外な答えが返ってきた。いろんな仕事をこなしてきたらしいが、ふと「寿司屋にもいた」と。今はもうあるかわからないが、昔富士吉田のお寿司屋さんで寿司を握っていたことがあるようだ。この山奥の町で寿司職人に出会うとは少し驚きであった。「もう握れないよ」少し照れたようにそういったおじいちゃんの眼には懐かしさが宿っていた。
 今はおばあちゃんとの二人暮らし。小さな畑で少しの野菜を栽培してる程度だ。お子さんは左官屋をしている息子さんと看護婦の娘さんの二人。今はもう二人とも離れて暮らしている。
 買い物は隣町まで買い出しに行く、または農協の移動スーパーで済ます。やはり不便なところは感じるらしい。でも戦争を経験しているおじいちゃんにとってはあまり苦ではないようだ。終戦直後の食糧難の時代を乗り越えてきた強さだろう。そんなおじいちゃんを見て、自分も励まされる思いがした。

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おじいちゃん

居住地 五箇地区 薬袋
取材日 2000/03/21