茂倉の映画館

 茂倉で生まれ育った辰重(たつしげ)さんは、大工職人として茂倉で生活していました。しかし、どうしても茂倉では仕事が少なく、20年前に甲府に出て大工をすることにしました。そんな辰重さんも、去年、ようやく退職して茂倉に帰ってくることができました。辰重さんのように、一旦、茂倉を出た人が、もう一度茂倉に帰ってくることは少ないと言います。当時の茂倉と比べて、随分人が少なくなりました。
 辰重さんは現在、奥さんと二人でのんびりと生活しています。奥さんは、茂倉で生まれ育ったのではないので、初めて茂倉に来たときは、この山深い茂倉にびっくりしたそうです。しかし、今では、すっかり茂倉に打ち解け、毎日茂倉のおばあちゃんの家に遊びにいって廻っているそうです。
 辰重さんは、中学2年生のときから、カメラに興味を持っていました。それ以来、写真を撮ることが辰重さんの趣味であります。甲府で生活していたときも、道祖神祭り、相撲大会、盆踊りの時は茂倉に帰って、当時の茂倉の様子をカメラに収めてきました。辰重さんは、茂倉の住民はすべて、写真に収めていると言います。現在は、茂倉の人々に、今までの写真をスライドにして見せることが生き甲斐になっています。そのために、映写機まで購入しました。私たちにも、スライドを快く見せていただきました。その中には、どんどん焼き、獅子舞、盆踊り、敬老会、消防の集まりなど30年前の茂倉の姿が存在していました。以前は、500枚以上の写真があったそうですが、今は整理をして200枚ほどになったそうです。誠にもったいない話です。その場面毎に、辰重さんは、思い出深く解説して下さいました。辰重さんは、今は、茂倉のおばあちゃんを呼んで月に数回、スライドの鑑賞会を開いています。それを楽しみにしているおばあちゃんも多いそうです。私たちにも辰重と茂倉のおばあちゃんが思い出話に花を咲かせている光景が目に浮かびました。さながら、辰重さんの家が、茂倉の小さな映画館になっていたことでしょう。

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辰重 さん

居住地 三里地区 茂倉