心優しいハンター

 伯美さんは、東京・江戸川出身。昭和20年3月7日の東京大空襲のときに父方の実家のあったこの地に疎開してきたのがきっかけで,ここで暮らすようになったそうです。
 伯美さんは、5年程前から鳥獣保護員という役をしており、密猟者を取り締まったり、注意を促す看板を山の中に取り付けたりしています。
 ご自分はというと、猟のほうは健康のために散歩がてら行う程度だそうです。真剣に猟をしている人は弁当を持って狙った獲物は捕らえるまで追い続けるのですが、伯美さんは仲間と冗談を言いながら猟を楽しんでいます。また、追い詰めたサルにいかにも『勘弁してくれ』といった表情をされ、猟犬から逃がしてあげた話や、イノシシ狩りに行ったのに、小さなウリボウを連れた母イノシシに遭遇して撃とうという気すら起きなかったという話など、心優しい伯美さんの猟にまつわるエピソードを聞かせてもらいました。
 伯美さんが早川町にきた頃は、山には落葉樹多く野生の動物たちの食料もたくさんあったので、熊が人を襲うようなことはなかったのだそうです。しかし、森を伐採し木の実のならない針葉樹を植えたため、食料難で動物たちが里に下りてきて農作物が荒らされるようになりました。だから、農作物に被害の出るのは動物たちのせいではない、確かに戦後の復興も必要で一概に県や国のせいとも言えないが、県や国の人たちには材木として使いやすい針葉樹を植えるのではなく山ひとつでもよいから山に適した落葉樹を植えて、動物の育つ山を作ることが必要だ、と話してくれました。
 ちなみにこの伯という字は「のり」と読むのですが、皆さんは正しく読めましたか? これは伯美さんのお父さんが神主さんにつけてもらった名前で、昔の神様の中に同じ読み方の人がいるそうです。

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伯美さん

居住地 硯島地区 本村(原村)