室畑の釣り師

 鉄雄さんは室畑育ちの元気な釣り好きおじさんです。週に一度は近くの川へ釣りに行き、ヤマメなどを釣ってきます。話を聞きに行った時もちょうど釣りから帰ったところで、庭先で塩焼きを作るとこでした。釣るばかりでなく小さな魚は上流へ放流して、魚が少なくならないようにもしていました。昔はもっと川がきれいだったけど、2,30年前にパルプを取るために雑木林を伐採したから、川も荒れて魚が減ったそうです。その後針葉樹を植林したのですが、被害は川だけに留まらず、木がなくなることで餌を失ったイノシシなどが食べ物を求めて集落へ降りてくることもあり、家の近くにもイノシシがクズの根を堀った跡がありました。イノシシ以外にも獣害はあって、山で作っている椎茸ができ始めの頃にリスに食べられることもあるようです。それを防止するためにリスを捕まえたのはいいけど、殺すのも可哀相だからといって2匹飼っていました。他にも杉の木の皮を樹脂を吸うためにクマが剥いて木を枯らしてしまうのですが、クマは禁猟なのでどうしようもないと困っていました。
 8人兄弟の長男で、早川町内にいるのは鉄雄さんだけだそうです。昔はひと家族の人数が多かったので10戸でも80人はいたけれど、今は仕事がなくてみんな出ていってしまったから、戸数は減ってないけど人は全然いなくなったと残念がっていました。子供は4人いてお盆には孫を連れてみんな帰ってくるので賑やかだそうです。鉄雄さんは18才の時に母親をなくしており、その時に長男として自分がここへ留まることを決意したそうです。でも子供達はもうみんな早川町から出ており、無理に家に残すわけにもいかないのでこの家は自分の代までだと言っていました。室畑は店もないし不便なことばかりだと口では言っても、家が残っていかない、と言う時は少し元気がないように見えました。

  • 室畑の釣り師

鉄雄さん

居住地 硯島地区 長畑・室草里
取材日 2001/08/29