オモシロイオモシロイオモシロイ

 早川みたいな田舎なんて嫌だったんだけどさ、「お前いけ」って親父にいわれたから来たんだよ。

 頭だしからちょっとびっくりするんですけれども、そんなことを言い出したのは義一さん。そして今向こうの方でお茶を入れてくれているのは、奥さんの幸子さん。

 三重県から来たんだけどね、いいことないね。便は悪いし。

 早川町のいいところを聞くとそんなことばっかり返ってくるんですが、こっちに来るきっかけとなった林業のことではラララな話し方。

 アレがね、楽しいんだよ。木を切るときに、鉈でうけをきって、チェーンソーで反対側から切るとバキバキバキってね。アレは面白いんだけど、危ない仕事だよね。おっかない。いつ石が飛んでくるんだか、チェーンソー使ってるから音でわからないって。あばらと2カ所折ったりしたんだけど、70のときに足をいためて、もう歳だったし止めたって。山師は恐いよ。足は重くなるし、若いときは高いところが好きだったんだけどな。今じゃそうはいかねぇって。

 林業やっていたから、木を使う趣味なんてないのだろうか。

 いやぁ、ねぇけどね、根っこの方を磨くときれいに光るんだよ。鳥の形とかにしてね。最後に油のでキュッキュッって磨いてね。

 やっぱり現場ならではのお楽しみって、どこにもあるんでしょうね。きっとそう。
 幸子さんは大原野の出身の人。二人はね、この家の前の農協に幸子さんが勤めているときに、なんとなーし仲良くなって、なんですってのよ。

 あの頃はみんな戦争で何もなかったからねぇ、働くのだけが愉しみだったのよ。中洲はみーんな林だったの。昭和12年頃開拓して。そんでしょいこしょってこーんのくらいの細い道登ってったのよ。

 幸子さんに早川のいいところを聞いてみたら、静かで紅葉がきれいなところ、と。そしたら義一さんもやっと納得してくれました。お二人の趣味はゲートボールだったんだそうです。この集落のチームは強くって、去年までは優勝ばっかりだったそうです。

 でも、もう人がやめちゃってできねぇって。去年まではね、優勝ばっかりだったんだよ。朝散歩してひるからゲートボールやるって、いつもだった。
 昔はね、週に2回やろうっていってたんだけどね。もう大会になると2、3度やるだけ、ねぇ。

 せっかくの趣味だったのに、残念ですね。
 話を聞いていると、義一さんも早川町のいいところを発見してきた様です。例えば行事がたくさんあるところとか。

 老人クラブでね、年に2回行くって。日帰りと一泊とね。夜の宴会とか道中歌ったりとか、そっちの方が楽しいんだ。食べるのはね、今はいろいろできるから変わらないけど、降りてもそんなに面白いわけじゃないって。夜の宴会とか、道中歌ったりだとかの方が面白いって。食って飲んで。温泉まつりとか、いろいろあるのはいいね。

 それには幸子さんもにんにきにっこりしながらうなずいている。そうそう、この辺に住んでいる女の人は、みんな富士電子に勤めていたそうです。だからみんな顔見知りで、こんなふうに旅行にいったりすると、みんながみんなにお土産をかってくるそうです。みんな顔見知りって楽しいでしょうね。幸子さんもしばらく勤めていたそうです。

 勤めるにしてもとにかく楽しくやらなきゃ。オモシロクくないと楽しくないって。みんな顔見知り、ってそれもいいところだね。

 早川町のいいところ、たくさんあるじゃないですか。

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居住地 三里地区 中洲
取材日 2001/12/04