チーン、チーン

 笑顔の素敵な玉子さん。若いころは土木作業員をしていましたが、ある日仕事中にトラックに引かれ、腰や足を骨折するという大事故に遭いました。半年間は特製のギブスベットで寝たきり状態。その後も、1年間は鰍沢の病院へリハビリに通いました。しかし、これが実は玉子さんの人生の転機だったのです。
 その後、土木作業員はもちろん続けられないので転職し、電子部品の会社へ13年、中学校の用務員さんを3年、それから新倉にある診療所の先生達のお世話も9年しました。この間を玉子さんはとても楽しかったと振り返ります。学校や診療所の先生達の食事の面倒をみることも多く、自分の作った料理で人をもてなしているうちに、料理の腕は上がりレシピの数も増えたとか。そして何より、「おいしかったよ」と喜んでもらえることが、玉子さんにとっても喜びになっていきました。僕らも取材中、ふかし芋、酢の物、大根と里芋の煮物、米の粉で作った団子などをいただいてしまいました。とても美味しかったです。
 そんな玉子さん。最近では野鳥公園の近くにある「おばあちゃんたちの店」の運営にも参加しています。そこでは近所のおばあちゃん達が、とれたての野菜や手づくりの漬物、またワラやアケビのツルで作った小物などを持ちよって販売しています。玉子さんも、毛糸で作ったタワシやハナザブトン、ワラゾウリやミノなどを作っては持っていき、お客さんに喜んでもらっています。また週に一度まわってくるお店番の時は、朝からお団子などを持っていき、周りで畑仕事をしているおばあちゃんを呼んでは世間話に花を咲かせるとか。
 そうそう。実は玉子さん、テレビにも出演されたことがあるんです。「おばあちゃんたちの店」で、いつものように仲間とお手製のお菓子をつつきながら話に花を咲かせているとき、たまたま通りがかったテレビ局の人が興味を持ったようで近づいてきました。

 テレビ局:「何、食べてるんですか~?」
 玉子さん:「ちんちん焼き」
 テレビ局:「ちんちん焼き?なんですかそれは?」

 というきっかけから会話が弾み、なんと「ちんちん焼き」をテレビ局で実演・試食することになりました。タモリや田原俊彦のそっくりさんも来て、おいしい、おいしいと評判だったそうです。
 そんな「ちんちん焼き」とは、水に浸して柔らかくなった大豆とにらを刻んでうどん粉でねって、油で焼くというものです。中に入れる具も生地も自由で、ヨモギを入れたり、モロコシの粉を使ったりと、バリエーションも豊富です。そして気になる名前の由来ですが、油を引いたフライパンに生地を落したときになる「チーン、チーン」という音から来ているとか。みなさん、決して勘違いしないで下さいね(笑)。

  • チーン、チーン
  • チーン、チーン

玉子さん

居住地 三里地区 中洲
取材日 2001/12/04