花と堤防

 深沢定富さんは旅館「大家」の2代目御主人。もともとは百姓で定富さん自身も子供の頃は焼畑を手伝った覚えがあると言っていましたが、ダム建設による家屋の移転をきっかけに定富さんの両親が始めたそうです。実は定富さんが旅館業に専念するようになったのは最近のことで、それまでは地質調査、用地測量の仕事を経て発電所に36年間勤めていたそうです。その間は奥さんが旅館をきりもりしていたそうです。
 定富さんには息子さんが2人と娘さんが1人いて、3人とも結婚して山梨県内に住んでおり、正月と盆には帰ってくるそうです。中でも御長男が一番帰ってくるそうで、定富さん自身はできれば旅館を継いで欲しいという気持ちがあるそうですが、「うちは温泉が出るわけでもないし、この状況では旅館業をやっていくのは難しいだろうな」とも話してくれました。
 しかし、旅館「大家」に訪れると人の目を引き付けるある物があります。それは「大家」の前にある堤防に咲く花々です。昔は、堤防がなく「大家」から見る湖と山の景色が綺麗でボートを出したりしていたそうです。今では、奈良田湖と集落の間には灰色の無機質な壁ができてしまいましたが、定富さんが一から育て上げた花々によって「大家」の前は一味違ったものになっています。そして、この定富さんの趣味でもある花づくりは奈良田住民による白樺会という活動の中でも行われているそうです。
 花づくり以外にも定富さんは「甲種」と呼ばれる罠を張って猪や鹿を仕留める猟をやったり、それと同時に鳥獣保護員をしたり、他にも落石などが道路で起きた場合に身延土木に連絡する道路情報モニター、交通安全協会支部長、保護司などもやっているそうです。
 いろいろな役を担っている定富さんですが、僕たちはやはり「大家」の前にある花々に感動しました。「大家」の前だけではなく、奈良田の防波堤の前を全て彩るくらいにがんばって下さい。

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定富さん

居住地 西山地区 奈良田