倉庫に眠る力作

 栄幹さんは奈良田で生まれ育ちました。高校や就職後の単身赴任などで何年かは町外に住んだこともありましたが、感覚としてはずっと奈良田にいたようなものだそうです。最近では、集落の行事や集まりがだんだんと少なくなってきたことを心配しています。週末に働きに出ている人もたくさんいるし、なかなか人が集まらなくなってきてしまったようです。
 それでもやはり、これからもずっと奈良田に住み続けていきたいと話してくださいました。『他の場所と比べるわけでもないけれど、やはり奈良田に不満はないし、なによりも、自分にとってはかけがえのない大切なところ。』そんな栄幹さんの唯一の心配事は息子さんの結婚のこと。仕上がるまで(結婚するまで)は、やっぱり心配なんだそうです。
 ダム建設によって家が今の場所に移ったのは、栄幹さんが小学生の時です。家が移動すること自体はさほど嫌ではなかったけれど、それによって何人かの友達が甲府などに移ってしまったのが、子供ごころにも悲しかったと言います。また、そのころの遊び場も、ダムによる移転前は比較的『川』側に向かっていたのが、移転後は『山』側に向かっていった気がするそうです。こんなことからも、移転が集落の生活に与えた影響の大きさを伺い知ることができます。
 栄幹さんの趣味は、釣り、絵、写真。いろいろやっていたけれど、だんだん無趣味になってきたと言います。しかし、なかでも油絵は、『ずっと続けてきたし、これだけは一生やるつもりだよ。』ということで、定年後はいよいよ絵書きに集中するそうです。奥さんにも『絵書きは儲かるかわからないから、定年後は養ってくれよ。』なんて冗談を言ったりして。私たちにも、少しワクワクしているのが伝わってきました。次の機会には是非、倉庫に眠っている力作を見せてくださいね。

  • 倉庫に眠る力作

栄幹さん

居住地 西山地区 奈良田