白根館のおかみさん

 友規子さんは、神奈川県の出身で白根館の守さんと結婚して、奈良田に住むようになりました。結婚して2年半ほどたってから奈良田に住むようになったのですが、その頃は、まだ奈良田まで来る道が舗装されておらず、道ががたがたで、内臓がおかしくなるかと思ったそうです。
 こちらを訪れることと住むことというのは全く違うことで、住むとなると寂しいものでした。住むようになったのは長男が産まれてすぐでした。子育て以外にも、商売をしていたということも有り、無我夢中の内に日々が過ぎていったそうです。
 現在ではテレビの普及や、観光客が来るようになって、子供をはじめ、おばあちゃん達も標準語をしゃべれるようになりました。しかし当時は、みんな標準語などしゃべらないので、引っ越してきて方言を理解することが一番苦労したということです。言葉が分からず、まるで外国に来たみたいで、お年寄り達に話しかけられても意味が理解できず、ただにこにこ笑っているだけで辛かったりもしたそうです。それも今では楽しい思い出で、時々話題となり皆でおなかを抱えて笑えるそうです。
 ここ奈良田が都会と違うところはやはり狭いため、新しい人が来ると話題になり、少し風邪をひいただけでも集落中の人に知れ渡っていたりしました。そんなこともあって非常に驚かされたそうです。また、奈良田は集落中が一族みたいな感じがあり、様々な行事が残っています。お祝い事などの節目節目には、集落中の人々が来て謡を歌ってくれます。それはとても感動的なのだそうです。つい最近まで男の子の元服の儀式が残っていたり、厄払いの時には、その家の屋号や家族の名前にちなんだ短歌を詠むなどとても風流な行事が残っているなぁと感じました。都会のように隣の人は何する人ぞでなく、田舎のあったかな人情はいつの世にも大切なことだと思います。

  • 白根館のおかみさん

友規子さん

居住地 西山地区 奈良田