みのるさんの武勇伝

 實さんのお宅は昭和31年に今の場所に移りました。当時22歳だった實さんは、山仕事や畑仕事をして生計を立てていたそうです。それ以前の奈良田集落では自給自足のような生活が営まれていて、会社勤めというのではなく、畑仕事のかたわら山仕事に出かけるというのが一般的だったそうです。その後、法律上の問題から焼き畑農ができなくなってしまったころから、實さんは発電所関係の仕事をはじめたそうです。そして定年後の今でも非常勤で月に何回かは働きに出ている働き者です。
 實さんの思い出話で印象的だったのが、昭和34年伊勢湾台風の時の武勇伝です。当時、實さんは発電所関係の仕事で川の上流の建設現場に行っていました。その日はそこにいるときに台風が過ぎて行き、台風の被害で鉄橋は流され道路は崩れ、帰れなくなってしまったそうです。そこで實さんたちが唯一の手段である『つり橋』から帰ろうとしたところ、こちらもほとんど流されてしまっていて、ワイヤーロープだけが残っていました。『当時は若かったからね。』本人も話すように、豪快にも實さんたちは、ワイヤーロープを綱渡りで帰ってきたそうです。途中からは集落の人たちに助けてもらい、なんとか集落まで辿り着いたそうですが、濁流が流れる川の上を綱渡りするなんて、本当に若くなければできない荒技ですね。
 そんな實さんの趣味は民謡と写真。民謡は始めてもう十年になります。主に三味線を担当する實さんは月に二回、中巨摩まで練習に行くことを欠かしません。また写真の方はデジタルカメラを所有し、パソコン、スキャナー、プリンターなどを一式揃えたデジタル派です。わたしたちも、實さんの多才さには驚いてしまいました。
 仕事をリタイアした後は趣味を楽しみたいとのことで、三味線を弾いたり、花や野草の写真を撮りに山に散歩に行ったりと、のんびりとした生活を過ごすそうです。

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實さん

居住地 西山地区 奈良田