まちの活力、自分の活力

 まちづくりにも厳しい視点をもつ秀一さんはいう。
「行政は住民へのサービスだから、行政自体が主体になってはいけない。住民の活力を奪うだけだ。住民が自分たちの事を自分たちで考えてね。クリスマスツリーを飾るのではなく、根っこから育てるようなことを心がけないと。いろんな議論が起こるプロセスも重要だ。それがまちの活力になる。社会全体が薄っぺらな評価体質になっている中で、何が目標か、何が本物かをきちんと定めていかないと。100年先を見てね。」
 この雨畑地区では今でもお茶を栽培している。無農薬で一番茶しか摘まない。
「お茶摘みを手伝った事があってね、おもしろいんだ。みんな活力があってね、大変だけど元気があるっていうのかな」
 お茶を作るのは大変で、やめていく人がいるのがもったいないという。一度だめになった茶畑を再生するのは容易ではない。「お茶摘みのときのような活力が今の早川町には必要だ。」
 町内の地区対抗駅伝においては、秀一さんの属する硯島地区はとても団結力があるそうだ。選手は他のどの地区よりも練習をがんばるし、周囲のサポートも万全だという。「選手以外の人はうどんを作り、練習のあとにはヴィラの温泉に入り、そのうどんを食べながら一杯やる。それがまたこの地区の活力になるんだ。当日の応援も自発的に周囲の人がやり、給水所まで作ってくれる。町外の大会にも出場していて、人口が少ない割にはがんばっていると思う。」
 選手の少なくなった硯島地区の駅伝チームに誘われて、秀一さん自身、駅伝を始めたそうだ。その後練習をがんばり、知人の紹介で100km走るウルトラマラソンも始めた。北海道のサロマ湖のウルトラマラソンに出たときの感動は忘れられないという。走っているとき苦しいのはみんな一緒。自分自身が一歩一歩進まないといけない。だから一緒に走っている人とはすぐに仲良くなれる。地元の子どもたちが応援してくれるのもまたよいという。「子どもたちとハイタッチをすると、元気をもらったようになる。」ウルトラマラソンは年齢はあまり関係ないらいし。「自分より年上の人がむしろ記録がよかったりする。だから自分もまだまだ記録が伸びるんだという気持ちになり、がんばれる。」今では走る事が秀一さん自身の活力になっている。
 秀一さんは毎月100kmほど井川雨畑林道を走ってトレーニングしているそうだが、友人には「立派な高地トレーニングだね」といわれるそうだ。

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秀一さん

居住地 硯島地区 老平
取材日 2002/08/10