和裁→豆腐

 「硯島地区の同窓会を何年に1回かは必ずやるんですけど、割合みんな集まるんですよ。昔の言葉で話したりして、楽しいですね、同窓会は。そういうところが田舎はいいんですよ。」
 地元に住んでいる花江さんはよく役員になる。同窓会は、みんなやりたがっているんだけど、日程を合わせたりするのが大変だという。だから毎年やるというわけには行かない。でもやるときは遠くに住んでいる人でも来てくれる。同窓会の会場は、花江さんの勤めるヴィラ雨畑。
 ヴィラ雨畑で、食事を作っている花江さんは毎日忙しい。週1回の休みは畑仕事。ヴィラで仕事がある日も、仕事の合間に畑仕事。ひたすら働く花江さん。今はヴィラの豆腐作りに力を入れる。宿の食事としてだけでなく、外での販売も最近始めた。今日は早朝から48丁作ったそうだ。豆腐と一口に言っても奥が深い。毎回同じ水分量、豆量でやっても同じものはつくれない。だからこれでいいという事はない。それでも、どうすればおいしい豆腐ができるかの試行錯誤は楽しいという。
「おいしくなったといわれた時が一番うれしかったです。」
 でもさらにおいしい豆腐を作るために日々努力。豆腐作りは朝が早い。朝5時から働く事は当たり前。お客さんの都合によっては朝3時からのこともあるそうだ。来週はお盆で、雨畑湖上祭がある。現地のビラ雨畑は大忙し。それでもがんばる花江さん。
 ヴィラに勤める前は、和裁をなさっていたそうだ。自分の和服はたいてい自分で作る。成人式は自分の時も、子どもの時も自分で作ったそうだ。今では孫にも着物を作ってあげたりもする。以前は先生として指導経験もあるという。
 甲府で修行し、老平に嫁に来てからも、自宅で頼まれたものをひたすら作る。修業時代は厳しかった。エアコンもこたつもない部屋でひたすらつくる。先生も厳しかった。でもそういう経験が無くては職人になれない。
「生地って1枚1枚違うんですよ。だからアイロンのかけ方もそれによって違ってくる。そういうのは経験を積んで覚えるしかないんです。」
 和裁を極めた花江さんは、豆腐を極める日もそう遠くはないかもしれない。

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花江さん

居住地 硯島地区 老平
取材日 2002/08/10
取材者名 遊佐 敏彦