大島の手作り家具屋さん

 博之さんは、手作り家具屋をしています。東京出身だそうですが、落ち着いた土地で好きなことをしたいという気持ちで、8年前にこの早川町へやってきたということです。博之さんのお父さんは建具屋をしていたそうで、東京の木場で育った博之さんは、子供のころから木の近くで過ごし、また、木を扱う人たちにかこまれた環境で育ったと話してくださいました。以前は、お兄さんのプラスチック工場を手伝っていたそうです。38歳のころから1年、長野にある職業訓練校に通い、その後、山梨の家具屋に1年程つとめられたとのこと。山梨日日新聞で、早川町で工場を貸してくれる、という記事をみつけたことをきっかけに今の家に住むようになったそうです。現在は、お母さんとの2人暮らしをされています。
 博之さんは家のとなりにある工場で仕事をされています。工場では注文を受けたものと、そうではないものの両方がつくられています。ふすま、テーブル、棚、すずり箱など大きいものから小さいものまでいろいろつくっているようです。11月2日、3日におこなわれる早川町の文化祭へ、楡の木でつくった文机を出品されたこともあるということ。普通の家具ではどこにでも売っているので、博之さんの家具はひとひねりしています。木に入っているひびをデザインとして利用したり、面白い木目の木を使ったり、変わった形をしていたり、木を染めて淡い色合いにしてみたりと、ひとつひとつの作品それぞれに、それぞれの味わいが感じられます。木は特に早川のものを使うわけではないとのこと。思ったとおりのデザインに仕上げられる丈夫な木を選んでいるそうです。好きなものをずっと作り続け、工場に置けなくなるくらいの数になった時に、個展を開きたいとのこと。早川町には、博之さん以外にも東京から来た能面師や陶芸家がいらっしゃるので、時々交流をもつことがあるということです。
 高校生の頃に夜でも起きていろいろとがんばっていた博之さんは「夜鷹のようだ」と周りの人にいわれたといいます。それは、昔からやるときにはやる、という力を持っているということ。そして作業場には家具作りに関係のある本や雑誌がいろいろあり、それを読んで時代の流れを学ぶ努力をしていることがよくわかりました。昔からつくられている伝統の家具に負けない家具作りを、と前向きな博之さん。木の話をしているときに見せてくれた生き生きとした表情がとても印象に残っています。

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博之さん

居住地 硯島地区 大島
取材日 2002/03/03
取材者名 安東 いずみ