風の強い午後は

 「大島は風が荒い土地だからね」。風が吹きすさぶ午後にそう言って迎えていただいたのは大島の水野さんご夫妻です。夫の芳雄さんは大正二年生まれ、増穂町のご出身で、現在の大島の家に移り住んで15年くらいになります。二十代の頃は横浜や浅草で勤めていたそうですが、しばらくしてまた増穂町に戻ってきました。
 早川町に移り住んだきっかけは、大島の道路工事にやってきた折に薬袋に住んでいたはつ子さんと知り合い、結婚して早川町に家を借りたことからはじまります。その後は土木工事に携わったり野良仕事をしたりして暮らしてきました。そうして育て上げた四人のお子さんたちは現在それぞれの家庭を築き、他所のあちこちで暮らしています。それでも「お田植の時には手伝いに来てくれる」し、「休みの日には帰ってきてくれるさ」。農作物はお子さんたちにおみやげとして渡していたのですが、今ではお二人の顔を見たら「米」「じゃがいも」と単語だけで催促されるそう。
 そんな芳雄さんは大の甘党です。お茶一杯で、菓子皿山盛りの最中や饅頭をたいらげてしまうのです。「酒を飲みたいな、と思うときもあるけど家に帰ったら忘れてしまう。結局甘いものを食べる」とのこと。はつ子さんも「ここいらへんの味噌はしょっぱいからね、もう少し薄味でいいんだ」。味の好みもご夫婦で一致しているようです。芳雄さんは最近健康のために甘いものを控えようとしているのですが、はつ子さんの目を盗んでついついつまんでしまうそうです。
 風が強い午後はこたつでお菓子を。このマイペースなご夫婦の日常が続いていきますように。

  • 風の強い午後は

水野さんご夫妻

居住地 硯島地区 大島
取材日 2002/03/02
取材者名 手塚 佳介