「恋紫」の原点はここにあり

 文雄さんは集落内で毎日農作業をしています。昔は麦、大豆を中心にさまざまな作物を育てていましたが、今では山ぶどうも栽培しています。9月の半ば頃がぶどうを収穫する時期で、取材したときはちょうどその半月前で、おいしそうなぶどうがたくさん実っていました。手間ひまかけて作ったぶどうの横で、ハイ、チーズ。文雄さんはこのぶどうを毎年約1トン出荷するそうです。1・のぶどうからおよそ1本のワインができるわけですから、この畑から約1000本のワインができるということになります。採れたぶどうは勝沼に出荷し、そこでワインとして生まれ変わります。そして、「恋紫」という早川のワインとして、お店に並びます。早川に来られる方は、ぜひ早川の「恋紫」をお試し下さい。
 農業をやるようになったのは、60歳を過ぎてからのことで、それまでは山を焼いてその木炭を売っていたそうです。狩猟も20年ほど前までやっていて、熊、いのしし、シカなどを狩っていたそうです。一度子連れの熊に出くわしたことがあり、そのときはかなり危なかったそうです。(本州に生存している熊(ツキノワグマ)は、本来人間を見ると逃げてしまうが、子連れのときは、子供を守ろうとして人間に向かってくることがある。)同じく狩猟が趣味であるとなりの集落の輝昌さんとはとても仲がよく、昔は夏秋と差越をお互いに歩いて行き来していました。今でも電話でたまにお話をすることがあるそうです。
 早川で生まれ、育った文雄さんは小学生のときは大変でした。1年生から3年生までは夏秋のお寺である学定寺の坊主に教わっていて、4年生からは山を登って小縄という集落出て、そこから角瀬の方に歩いたところにある本建小学校に通っていました。片道2~3時間はかかり、遊ぶ時間などありませんでした。でも、たまに登校する途中にある川で遊んでしまい、そのまま学校に行かないで帰ってきたこともあったそうです。
 「農作業が自分の全てです」と言い放つ文雄さんの姿からは、その情熱が伝わってきます。これからもおいしいぶどうを作って下さい。

  • 「恋紫」の原点はここにあり
  • 「恋紫」の原点はここにあり

文雄さん

居住地 本建地区 差越・夏秋
取材日 2001/08/29