かやぶき職人

 孝行さんは雨畑生まれの茅葺き職人です。学校を卒業してから三年間師匠の元で修行をして、山梨市で下宿をして働いていたそうです。夏秋は奥さんの実家なので結婚してから暮らすようになりました。結婚してからも茅葺きの仕事は続けており、丸太を組んで茅や麦ワラで合掌造りの屋根を葺き、上にトタンの屋根を乗せるのですが、そのやり方も自分で研究したそうです。棟梁として夏秋や下の道路沿いも含めてこの辺りの民家はほとんど孝行さんが葺いたと満足気に話してくれました。トタンで葺くと水漏れがなくて葺き変える必要がないけど、みんな葺き終わった今は、茅葺き職人は休業中だとか。結婚してからは奥さんと養蚕もやっていて、家の裏山には桑畑があり、それを年三回カイコにあげていたそうです。でも奥さんが亡くなってから5年ほどで養蚕はしなくなり、今では桑畑にはヒノキが植林してあります。その後は兄弟で林業をしながら、合間を縫って自給自足の野菜作りを楽しんでいます。林業は兄弟でやってる小さなもので、遠くまで出るので疲れるから雨の日は行かないとか。山仕事に行く日は朝6時頃家を出て、夕方に帰ってきては野菜の手入れをするそうです。
 今は一人で住んでいるけれど、二番目の娘さんがいいとみに住んでおり、毎日のように孫を連れて来てくれるからそれが楽しいようです。家にも奥さんの若い頃の写真と一緒に元気な孫の写真やお孫さんが書いた孝行さんへのメッセージが架けられていて、あったかい雰囲気がします。話を聞きに行った日には雨畑にいた頃の友達も来ていて、毎日楽しく過ごしているとか。山奥だからと言ってそんなに不便を感じているようでもなく、住めば都だからどこでも変わらないし、ここは野菜が新鮮だからいい所だよと笑顔で話してくれました。

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孝行さん

居住地 本建地区 差越・夏秋
取材日 2001/09/01