塩之上の守り人

 塩之上を囲むように、電線が張ってあります。全長2キロ、杭の数は600本。これは畑をイノシシから守るためのもの。15年ほど前からサルやイノシシが出るようになったそうです。当時の町会議員の呼びかけで、イノシシ除けの電線柵を張ろうと集落の人々が立ち上がりました。完成後の管理は、集落の上半分を要さんが担当することになりました。町会議員さんに「要!おまえがやれ!」とかなり強く言われたそうです。実際、管理に必要な技術や知識があるのが要さんだけだったので、引き受けたそうです。今でも要さんひとりで3~11月の間、電線をしっかりと張り、毎日しっかり電気が流れているか確認しています。塩之上の農作物を守る、重要なお仕事を続けています。

 要さんの家は、早川町誌にも載っているほどの旧家で、集落内では2番目の古さだそうです。現在の‘深沢’姓の由来も話してくれました。その昔、ご先祖様が、笹走の方にある、‘深沢’という沢まで大名を迎えに行ったときに、この行為に感激した大名がこの名を与えたということ。その前は‘松尾’という姓だったそうです。
 家の裏には屋敷神様を祀ってあります。毎日、水・お茶・米・酒・塩をお供えしています。

 「若い頃に大変な仕事ばかりやってきたから、今は体のあちこちにボロがでてきちゃって」という要さん。僕らがお邪魔したときも、ちょうど湿布を貼っているところでした。でも電線の管理は後継者はいないそうです。まだまだ要さんのお仕事は続きそうです。日課のリポビタンDと、娘さんが持ってきてくれるアロエクリームで元気全開、塩之上を守ってください。

  • 塩之上の守り人

要さん

居住地
取材日 2002/02/25
取材者名 小島 摂