ふるさとの価値

 峰さんはお母さんのたかさんと二人暮らしをしています。お母さんがデイケアサービスを受けに出ているときは、畑仕事をするのも峰さんの楽しみの一つ。
 でも最近は畑を荒らすサルがどんどん増えていて、峰さんを含め、畑仕事を楽しみにしている白石の女性達は困っています。なにせ、時には一度に30匹以上の集団で、ゆず・大根・玉ねぎ・キャベツなどありったけの作物を根こそぎ荒らしていくのですから、住民の方にはたまりません。しかもサルたちは出来上がった作物だけでなく、新芽や根、葉などまで食べようとして、結果的に畑の作物はほとんどが無くなってしまうのだそうです。
 それでも、峰さんは「他の何処よりここがいい」とはっきり言います。県道を挟んで大きく上下に分かれた白石集落のうち、峰さんの住む下側の地区は、畑仕事を通じた女性たちのコミュニティが活発で、晴れた日なら誰もが自然に外に出て道端でおしゃべりをし、隣近所の人達を家に招いたり招かれたりして、一緒にお茶を飲んだりしています。
 自分の住む集落の良さは、外に出ると改めて感じるそうで、旅行へ行く時でも「いくつも泊まれない」のだそうです。例えば朝の挨拶一つをとっても、町では普通、「おはようございます」と言うけれど、長年の深いつきあいがある地元では、それより先に「昨日はさ」と話が出る。それに、そうやって常に他人の輪の中で緊張感を保つことで若くいられる、家に籠もっていては服も髪もそのままになってしまう、と峰さんはおっしゃいます。そう言われれば、なるほど確かに。峰さんの頬はスベスベしていて、とても綺麗でした。

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峰さん

居住地 都川地区 白石
取材日 2002/02/24
取材者名 小宮 一穂