穏やかな多趣味家!!

 正之さんは、奥さんと次男とともに暮らしている。生まれも育ちも戸川である。子どもの頃は、メンコやコマ回しをしたり、友達と2人で丸太の端を押し、線路の上を転がす遊びをしたりしていたそうだ。学校の帰り、道草していたずらもした。松の木の皮で舟を作ったりもした。水に浮かべると、松ヤニが水をはじくようで、勝手に進むのが面白かったそうだ。材木をトロッコで運ぶのを手伝ったりもしたが、下り坂でそのトロッコに乗せてもらえるのが楽しかったとのこと。孫が通う小学校の、昔の遊びを知ろうという企画によばれ、空気鉄砲や紙飛行機、風車の作り方を教えてきたりもしたらしい。子どもの頃の楽しい日々が、今でも人との交流にも役立っている。
 家で行なっていた養蚕の手伝いもしていた。子どもから老人まで、皆で仕事を分けられるのは良いという。一番の現金収入でもあったので、後で、ちょっとしたご褒美をもらえるのも嬉しかったと笑う。
 旧制の身延中学校に在学していた頃は、親戚の家に下宿して、木炭を燃料に走るという木炭車のバスで通っていた。馬力がない上、満員になるのでのろのろ運転で、遅刻することもしばしばだったという。その後、郵便局に25年勤め、さらにNTTに9年勤め、その間、保護司もボランティアで22年続けている。その功績を認められ、法務大臣表彰も受けた。
 正之さんの興味・関心は幅広く、また多彩だ。昭和62年に退職してからは、もっぱら趣味を楽しむ毎日だそうだが、俳句、詩吟、陶芸はそれぞれ10年ほど、習字は4段、水彩画も描き、写真も少々・・・最近では日本画にも興味があるらしい。
 今後は、旅行をたくさんしたいという。これも以前からの趣味の1つであるのだが、珍しいものなどをどんどん見に行きたいそうだ。正之さんの挑戦はとどまることを知らない。これまで、さまざまな土地を訪れたが、早川町は、富士山も見られ、空も大きくて好きだという。
 ほとんどの趣味は奥さんに影響されて始めたようで、今も2人仲良く続けている。2002年2月24日には34回目の結婚記念日を迎えた。お祝いとして、子どもから贈られた鉢植えの花が咲く居間で、今日も趣味の世界に遊び、楽しい日々はゆったりと過ぎていく。大好きなお酒を飲みながら。(俳句にもたくさんお酒が詠まれている!)淋しさや退屈は全く感じたことがないという。「人に迷惑をかけない」が主義。子どもにも、これは中心的にしつけたという。そんな子ども達は、退職時に旅行のプレゼントをしてくれ、古希のお祝いには一緒に旅行に行ったりもした。暖かい人間性が伝わってくる。
 私達を外まで見送ってくれた。「ほら、富士山がよく見えるでしょう。良かったね。」と言いながら。「迷惑をかけないようにする」どころか、正之さんの豊富な経験と穏やかな日々は、周りの人を癒しているに違いない。

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正之さん

居住地 硯島地区 戸川
取材日 2002/03/06
取材者名 宮田 妙子