硯匠庵館長の哲学

 健さんは、ヴィラ雨畑の所長であり、硯匠庵の館長でもあります。
 硯匠庵は、地元・雨畑の地場産業である硯づくりを、もっと世の中の人に理解してもらうための施設です。硯は、戦後、無用のものとなりつつありますが、なんとか地域のものとして硯の生産を保存しておきたい、後世に残す体制を作りたい、という考えで住民が10年来、働きかけをしてできた施設だそうです。健さんは、硯匠庵を地域の情報発信基地にしたいと考えています。
 文字が文化の基本であるからには、硯は文化の原点だ、と健さんは考えています。生活文化や食文化など、文字を使わない文化もあるけれど、それをきちんとまとめることができるのは文字だけ。そういうことを、コンピュータ時代の若い人に知ってほしいのだそうです。
 また、ヴィラ雨畑では、お客さんがいかにくつろげるかを常に考えています。限られた予算の中で、ビジネスのお客さんも観光のお客さんも、自分の家にいるようにくつろいでほしい。そのためどんなサービスを提供すればいいか、発想が次々と出てくるそうです。
 そんな健さんは、基礎が大事、と考えています。なぜそうなるのか。何のためにそうするのか、常にそれを忘れないようにしないと、何事もうまくいかないというのが健さんの意見。全くその通り!!施設の運営だったら、「この施設は何のために営業しているのか」、教育だったら「なぜいろいろなことを覚えるのか」。健さんはそれを、「心」と表現していました。「どんな施設でも、その施設にふさわしい心があればうまくいく」と。
 地域を元気にするということについては、過疎や高齢化で大変でも、今いる人で何かを仕掛けていかないとダメだ、とのお言葉。「若いもんもいんで、へーいいわ」と言っていたのではダメで、高齢者には高齢者なりにできること、若い人には若いなりにできること、子どもにだってできることがあるのだから、うまく役割を見つければよいのだと。地域の資源も同じで、早川町だったら、この山がある限りこの山を活かさないといけないと健さんは思っています。
 人生を振り返ると、草分けのようなことを多く手がけてきたそうです。自ら「探求心が強いから」とおっしゃるように、常に物事を深く考える健さんだからこそ、そういうことを多く成し遂げることができたに違いありません。

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健さん

居住地 硯島地区 戸川
取材日 2002/03/10
取材者名 柴田 彩子