早川の自然に遊ぶ

 義嗣さん、時子さん夫婦のお宅には、昔の住まいの面影が所々残っている。屋根裏の萱や、かつて使っていた「改良かまど」など。
 義嗣さんは、町役場の職員として41年間働いてきた。現在は収入役をしている。役場では、これまで税務、財政、教育など多くの部署を歴任した。そのおかげで、地方行政についての幅広い知識と経験を得ることができた。そして、町民の多様な相談にものってあげることができたという。
 義嗣さんは、早川の自然をよく知り、その中で遊んだ人でもある。小さい頃、雨畑ダムができる前は川でカジカ取りをした。カジカでだしをとったのしいれ(ほうとう)の味は最高であった。趣味は登山で、自宅周辺の山々や南アルプスを中心に、八ヶ岳、北アルプスへも足を伸ばした。そして、鉄砲打ちもやった。一番の思い出は、100kgはあるクマを一人で獲ったことだ。ちょうど20年くらい前だった。猟期に鳥撃ちに出かけたところ、家の近くでばったりクマに遭遇。ここは、周辺の地形を知り尽くしていた義嗣さんに軍配があがった。クマの先を回って、しとめた。その時の写真は、今も大切に飾ってある。
 現在では、時子さんとともに、5、6年前からアケビ蔓の細工を始めた。材料は義嗣さん自ら山に入り、採ってきたものを、夫婦で分け合って使う。2階の部屋で、たくさんの籠や入れ物を見せてもらった(写真)。どれも丈夫でおしゃれである。子供や友人が遊びに来た時にあげたりするのが楽しみだ、と時子さんは笑顔で語ってくれた。
 義嗣さんは60歳、時子さんは58歳。今一番の楽しみは、電子メールを覚えて子供達とやり取りしながら、孫の成長を見守ることである。夫婦の向学心は衰えない。

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義嗣さん

居住地 硯島地区 戸川
取材日 2002/03/04
取材者名 桝 厚生