動物たちに囲まれて

 良次さんのお宅に行くと、まず、2匹の甲斐犬が出迎えてくれる。良次さん夫婦は、動物好きだ。今は、この2匹しかいないけれども、一番多いときは、食肉用の豚を中心に山羊を1匹、鴨と兎を70~80匹、雉、猫、チャボなどを飼っていた。
 良次さんの出身は島根県の沖の島であるが、木材の切り出しの仕事で早川町に移り住んだ。木材の切り出しが下火になってからは、ダンプの運転手として生計をたてるよになった。そのかたわら、動物好きが興じてたくさんの動物たちと暮らすことになった。
 写真上は、良次さんの両腕に乗るチャボの姿である。知り合いから10こ卵を譲り受けて、保温機で温めて羽化させた。チャボたちは、生まれて初めて見た良次さんを親と思ったのだろう。そのうちの2匹が良次さんに特になついてきた。チャボのような鳥が人の腕乗るのは、非常に珍しいことであるという。
 写真下は、犬の乳を飲む子豚の姿である。これもまた珍しい。出産後に親豚が亡くなってしまい、子豚は飲む乳がなくて困っていた。しかし、子豚は、出産したての犬の乳を飲むようになり、育っていった。それ以来、犬と子豚は本当の母子同様であったが、やがて6ヶ月後、豚を出荷しなければならない時が来てしまった。犬は、出荷のトラックに乗せられた豚をいつまで追いかけていった。良次さん夫婦には、その光景が今でも目に焼き付いて離れない。
 良次さん夫婦が動物たちに優しく接したおかげで、動物たちは、本来人間には見せることのない様々な姿を見せてくれた。共に暮らした動物たちとの想い出は、尽きることがない。

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良次さん

居住地 硯島地区 戸川
取材日 2002/03/03
取材者名 桝 厚生